【安倍内閣誕生⑥】デフレ脱却への第一歩は過去の成長戦略未達の反省から

政府は日銀に強力な金融緩和を求める理由として以下の様に語っている。安倍首相は「日銀は伝統的政策でデフレ脱却できなかった。『新しい政策』で臨むのが当然」といい、麻生財務相は「デフレ脱却という今まで世界が経験したことがないことをやるから新しいことが必要」という。1%の物価上昇すらおぼつかない現状で政府は日銀に具体的に何を求め日銀がどう応えることで、デフレ脱却の効果を出すのか、その道標が示されていない。思い起こせば小泉内閣時代、金融緩和による低金利と円安で輸出企業の業績が良くなり確かに景気も好転した。今は原油など輸入が増え貿易赤字だから小泉時代とは環境が異なる。円安を喜んでばかりいられない状況だ。

「インフレ退治には金融政策がカギを握り、デフレ退治は財政政策がポイント」なのだが、冒頭に掲げた様な政府筋のこれまでの発言は、世界の長い歴史と経験中から割り出された財政と金融の守備範囲をきっちりと理解したうえでの発言なのかと疑問を感じるとの声がちらほら聞こえる。日本の「失われた20年」は「的確な経済成長戦略」を欠いた財政出動の結果である。今回のデフレ脱却には過去20年間のばらまき財政で、財政出動に制約がある。デフレ退治には過去の成長戦略と財政出動がなぜ成果を上げられなかった原因の検証抜きで政策立案したところで(充分成果が上がらなかった)過去の成長戦略失敗の二の舞になるのではないか。例えば、安倍内閣は「世界最先端分野を作るための規制緩和や研究開発支援」を謳うがいずれも過去の政権が達成できなかった政策の焼き直しにすぎない。その他のテーマも聞き慣れたモノが多い。
円安は製造業の国際競争力を取り戻せるが輸入物価の上昇で消費者の購買力は落ちるというトレードオフの関係である。また、日銀が金利を通じて経済に働きかけても成長を直接もたらすことはできない。金融緩和で日銀が時間を稼いでいる間に政府が改革に踏み出さねばならない。今回成長戦略策定に際し、ここは安倍首相言うところの『新しい政策』を取り入れるべく新たな検討・立案の方法で臨んではどうだろうか。それは日本の技術ではなく世界のマーケットの視座から日本を眺めること、早期に政策効果を上げるため技術シーズではなく市場ニーズに的を絞り、手順を踏んだ政策策定のプロセスを導入し実現可能性及び緻密な効果検証の仕組みを作ることだ。そして注意すべきは競争力の落ちた既存産業の延命策にならないことだ。
例えば医療・介護は日本が先進的市場であり、今後世界のマーケットが拡大する有望な市場であるから成長戦略の候補になったとしよう。現状の日本医療・介護業界の労働集約型の低生産性をいかにして知識集約型かつ装置産業型に変え労働生産性を高めるかを他産業波及効果、乗数効果も含めて総合的に検討し実現可能性が高い様なら初めて成長戦略の対象としたうえで、実現への道筋を国民に解り易く説明するのだ。そうすれば28日夜のNHK番組で麻生財務相が語った「お金を使おうという国民の『気』」が高まり財布の紐が緩むかもるかもしれない。

しかし、一番大切なことは、将来の日本がどういう国になるのかを国民に明確に示すことだ。「日本を取り戻す」「美しい日本」などでは抽象的すぎて具体的イメージがわかない。例えば、先進国の経済成長はもはや限界だからこれからの日本は低成長を前提に社会保障は国民に自助と自己責任を求める。かわりに国は権限と財源を自治体に譲渡し、小さな政府を志向するということでもいい。とにかく国の将来像と目標を明確に国民に示してもらいたい。
国民が心配するのは物価が上がるだけで賃金が増えず、景気も良くならないのではないかということ。実際、物価上昇2%達成まで日銀が大量の国債を買い続ければ先進国最悪の政府債務がさらに膨らむ。2%の目標達成が間近になれば市場がゼロ金利解除を先読みし金利が急上昇するだろう、金融機関の国債保有量が膨大で金融システムのリスクが国の財政に直結するなかで、何かのはずみで売りが加速すれば金利は短期間に急上昇する。そこで国債を大量に保有する金融機関や国民が国債の狼狽売りを始める。市場の動揺が大きいほど収益の機会が大きいからこの事態にほくそ笑むのが投機筋で、彼らの行動で市場の混乱にさらに拍車がかかる。経済の実体の伴わない金融は「虚」であるから中央銀行も政府もコントロールできなくなる。金利上昇で国の財源を国債発行で賄えなくなり、国民に重税を求める。結果は海外の投資家や企業に日本国民の富が吸い取られ日本の国民生活が奈落の底に落ち込むという悪夢の可能性だ。

白川日銀総裁は日経新聞のインタービューに安倍首相に迫られ2%を視野に入れた物価目標に関し『デフレ脱却には金融緩和と成長力強化の両方が必要だ』『景気がよくなって物価があがるという実体経済活動の高まりが必要』『重要なのは金融政策の柔軟性を確保すること』と語ったという。インフレになってしまえば中央銀行も政府もコントールできなくなるから、事前にインフレの芽を摘む策をあらかじめ講ずることができれば日本の将来は開かれると信じたい。
20日の日銀金融政策決定会合後の記者会見で白川日銀総裁は「円高是正の資金の流れを強める」と語っていたがその発言だけ聞くと、まさに輸出を増やすために通貨安誘導を競う「通貨戦争」への日本参戦であり、欧米や新興国との紛争のタネまきだ。丁寧なフォローアップの情報を世界に発信すべきである。

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