【首相、消費税引き上げを決意】待ったなし!早急に首相主導の構造改革を

首相は10月1日に消費税8%への引き上げを正式に表明するという。消費増税の目的は少子高齢化による社会保障費の増加に歯止めをかけ財政再建を図ることだ。ひき上げの時期や幅の修正は、財政収支の改善が当初想定より遅れることや、秋の臨時国会で新たな法律を作るのに手間取り成長戦略設定に時間がかかるなどで、市場の動揺を招く恐れがあった。無用の混乱が避けられたことはコスト的にも大きい。
増税回避で座して死を待つわけにはいかない
デフレ脱却失敗や景気後退懸念が心配だからということで増税延期、若しくは先送りの声もある。だが、日本の深刻な課題は人口減であり、これを放置すれば日本は成長できず税収減で財政悪化が更に加速する。増税しないと長期金利が上がり、そのため資金調達コストが上がるから企業は設備投資を抑え、金融機関は多額の含み損を抱える可能性が高い。増税しなければ景気回復が継続する保証があるわけでもない。日本は人間に例えれば老年期なのだ「明日にもう一度というのはない。今日できることは今日やる」べきなのだ。財政再建を経済成長にかけるというのは「失敗を取り戻せる」という明日という日がある中での一種の「賭け」である、今の日本に「ばくちに現を抜かす」余裕はない。

去る9月9日神戸で浜田宏一氏の『アベノミクスとTPP』をテーマとした講演会があった。日本再生には先進国の流れに背を向けた金融政策、過去の成長イメージから抜けきれない産業界、相変わらず官僚主導の政策立案からの脱皮が必要とのことで、金融政策に経済再生を依存しようとする「わが国のリフレ論者」の多くとは論を異にする。氏は『現実の成長経路、すなわち実質成長率が潜在成長率に接近すると金融政策の効果が弱まりインフレの危機が増す』、『成長戦略として政府のできることは、規制緩和・競争促進・貿易自由化などに限られる』、『景気先行きの不安、特に2%近い需給ギャップが残ったままでは企業の投資増しが見込めないゆえに消費増税の時期を1年ずつずらしてはどうか』という。つまり、氏は市場の信認を維持することより増税が個人消費や生産にショックを与え総需要を押し下げることを危惧したもので、「財政中立」を保つことで財政引き締めを回避してインフレ期待に頼らずに物価上昇を目指す考え方が根底にあると思われる。即ち、デフレ脱却に必要な物価変動の影響力は基本的に金融政策である。潜在成長率の低下が日本デフレの本質であり、実質成長率の引き上げは金融政策の守備範囲外であるから、物価上昇率達成時の効果的な金融政策発揮のためには物価水準をコントロールできるような本来の金融機能を回復させる必要があろう。それには金融政策と財政政策を本来のスタンスに戻すこと。増税は社会保障財源確保のため財政再建策や財政健全化の一環であるからデフレ脱却とは別次元の問題のはずだ。今のところは物価は押し上げの方向にあるものの、デフレ脱却には供給側の改革や規制緩和により(金融緩和に頼らず)潜在成長率を高めることであり、財政健全化には消費増税と歳出削減両方への取り組みが必要だ。つまり中長期で日本の成長潜在力を高める唯一の道は構造改革なのだ。だが、これまで規制改革は実現の段階になると規制の所轄官庁と既得権団体の巻き返しで頓挫するのが常だった。首相にはこうならないように改革を全面的に支える覚悟がほしい。

言葉を換えれば、景気減速とデフレ脱却の遅れは突然起きる国債の金利暴騰とは違い、景気への影響はある程度、時間的余裕をもって対応できるということ。景気対策の中身も低所得者対応なのか、公共投資なのか、投資減税なのかといったように選択の幅がある。デフレ脱却の中心となる政策は金融政策であるから金融緩和策をさらに進める手もあるということだ。

アベノミクスの抱えるリスク
大胆な金融政策でデフレ心理が払しょくされれば需要が回復し構造改革が進展して経済成長が軌道に乗り、それによって財政健全化が進めば財政の破たんリスクが低下し持続的に経済成長が可能になるというのが日本経済再生のシナリオである。今のところアベノミクスは経済の信頼感で成果が出始めている。だが、インフレと円安が想定以上に大幅に進展し、円安にもかかわらず輸出競争力不足や外需低迷で輸出が伸びないかもしれない。この場合はインフレ目標は達成しても経済が好転せず円安とインフレの悪循環が起こり日銀が金融の引き締めに転じる。逆に国内物価が思ったほど上昇せず輸入原材料価格上昇コストを吸収するため賃金の上昇ができず内需低迷が続く。そうなれば資産価格も上昇から反落し資産デフレが起こり経済後退、税収低下、政府債務の増加を招く。これらのリスクを内包するのがアベノミクスだ。

そもそもアベノミクスとは何か。日本経済の潜在的課題は金利上昇だ。インフレと円安、低金利を同時に実現する確率は経済学的に低い。市場にインフレを約束すれば金利上昇を招き財政再建を困難にする。通貨安と物価上昇は長期金利上昇を招く。市場が将来の物価上昇を確信すれば金利も上昇する。住宅や設備投資など内需が回復すれば、日本の貯蓄率が低下しているから国債の国内での消化が難しくなる。今後金融緩和でさらに円安が進めば輸入物価上昇を通じて物価が上がり輸入コストの価格転嫁が大きな問題となる。市場が景気回復やインフレ圧力を織り込んで金利が上がると円安効果は打ち消される。
これからも金利上昇を招かず通貨安を進められるだろうか。また、成長戦略は中長期戦略で、金融と財政が短期的に両輪。金融緩和に限界があり、財政出動は、いつまでも継続できるものではないから安倍ノミクスは持続性が問題。非伝統的金融緩和の効果は最初の1年目だけでその後効果は小さくなっていくともいわれ金融政策に過度に依存することには疑念がある。早急に地道な財政再建に取り組むべきである。

日本国債はバブルか?
いずれにせよ不透明な海外需要の停滞や市場の動向次第でアベノミクスが破たんする可能性はすてきれない、成功のカギは世界経済・市場の動向と財政再建目的達成までの時間にかかっているのがアベノミクスの現状の姿である。従って消費税ひき上げ後も国債金利暴騰のリスクは残る。もし日本国債の金利暴騰が起これば政府にも日銀にも国債暴落を止めることはできない。膨大な公的債務にかかわらず国債金利は低水準で推移しているのは市場が当面の財政危機のリスク確率を低く見ているからだが確率がゼロというわけではない。確率の低いリスクが急に顕在化した例が08年9月のリーマンショックだ。直前まで株価など高い水準で推移していたがリスクが顕在化すると市場の暴走はだれにも止めることができなかった。公的債務が200%を超える日本の財政の健全性には疑問があって当然で日本よりはるかに低い債務比率の欧州の多くの国が債務危機に陥った。資産バブルの破裂は資産価格が実態とかけ離れ高くなるからでそれゆえに高価格が急落してバブルが破裂する。このように考えれば日本の長期金利が低い(国債価格が高い)ことは市場の日本への信任が厚いのでなくむしろ実勢よりも高すぎる国債価格が急落するリスクが高まっているのかもしれない。

長期金利は理由もきっかけもなくても突然上がりうる。上がる瞬間は予測できない。ちょっとした出来事が経済のかく乱要因になる。
ケインズやミンスキーは経済を「安定が長く続くと内生的に不安定な事態が引き起こされる」と言った。政策は過去の政策をモデルにとられることが多いが、それはその時点、その環境条件下において効果的であったにすぎず、変化のスピ-ドが極度に早くなった現代では時間の流れと共に環境変化を伴う将来の予測は不確実で過去の確率からでは予測できないと考えるべきだ。人々のマインドと行動は異質で多様であり時間経過のプロセスとともに移ろい、他人や社会の動きに左右されるからだ。それはITの進歩による情報コストの低下とグローバル化、実資産の4倍ともいわれる金融資産の増殖が招いたものだ。長期金利をあげない方法は国民貯蓄より借金の規模を小さくする道筋を一日でも早く明確にすること。日本の貿易構造は変化している。円安で輸出が増えても資源の輸入で相殺される面があり、現状のまま推移すれば将来的に貿易収支赤字が定着し経常収支赤字もありうる。日本の様な借金大国がこのようになると世界のどこも助けようがない。

構造改革欠如が日本のアキレス腱
欧州危機による市場の混乱が一段落したことを背景にスペインは昨夏7%を超えた10年債利回りが4%台半ばに低下した。各国が進めた財政や労働市場の改革を市場は評価しているのである。一方ポルトガルでは財政再建策が揺らぐとの懸念が広がり10年物国債の利回りが危険水域とされる7%を再び超えた。市場の注目は究極的に財政健全化なのだろう。IMFは「日本の最大のリスクは財政健全化と構造改革計画の欠如だ」という。短期的には景気を下押しする消費増税の圧力に耐え日本経済を成長路線に乗せるには金融緩和で規制改革などの痛みを和らげながら構造改革で地力をつけるしか方法はない。
規制改革の本丸は医療・保育・教育など官製市場の民間開放。当然小さな政府を目指すから財政拡張とは距離を置かざるを得ない。消費増税決定の次は財政再建に向け中長期の道筋を示すことだ。財政の基礎収支を20年度に黒字化するのが国際公約。財政健全化の本丸は社会保障改革や年金のもらい過ぎを正し、医療の無駄を削り、社会保障制度の持続性と財政再建を目指す。その仕組み作りは税金を使わない規制緩和しかないだろう。

政府は消費増税の腰折れ対策に5兆円超の経済対策を月内に取りまとめる方針。早速、与党内からは国土強靭化の名のもとに「公共事業を増やせ」との声が上がる。官製ファンドを呼び水に民間投資を促すというが官の組織は調査案件の将来性を見抜けず税金無駄使いの懸念が残る。企業の再生に安易に資金が使われ、成長力を失った企業を温存する愚行に陥る心配がある。13年度の経済財政白書では、企業の投資障害は製造業では設備稼働率の低下、非製造業では期待成長率低下となっている。今の低金利と潤沢なキャッシュフローから見て投資減税の効果は乏しいし、政策減税の恩恵は重厚長大の製造業に偏る。今のところ、「政府支出の増大、減税で需要を刺激し消費とGDPを押し上げる政策」は将来期待に関する企業や家計の反応を考慮しておらず誤った政策効果をもたらす危険がある。それより財政負担を伴わない規制改革で企業が成長する環境を整え民の創意工夫を引き出す政策が必要。経済活動で国が大きな役割を演ずる国家資本主義は中国の例をみるまでもなく企業のモラルハザートが避けられない。
政権は「消費税は社会保障のために使う」という目的を堅守すべきだ。中期財政計画では歳出の上限や削減の手段など明示していないのはなぜか。歳出削減のカギは社会保障費の効率化のはずで年1兆円の自然増を放置していては財政悪化に歯止めがかかるわけがない。歳入を増やすための増税ではないのである。

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