【地域経済活性化支援機構】自治体と連携して中小企業の過剰状態解消に努めよ

日銀の異次元金融緩和は政府や企業が改革を通して成長力を高める最後の機会を与えているのではないだろうか。異次元の緩和が日本経済のリスクを顕在化させないうちに日本全体の産業構造改革を急がねばならない。なかでも再編・淘汰が進んでいない中小企業の過剰状態解消は新しい成長やイノベーションの起爆剤となりうる。

日本がデフレ、即ち需要不足に苦しんできた背景には投資や消費の低迷のみならず全要素生産性の伸び率低下がある。近年の日本は生産性の高い大企業が生産を拡大する一方で生産性の低い中小企業が生産を縮小するなど経済の新陳代謝機能が低くなっている。特に中小企業では組織改編や企業内職業訓練などの無形資産投資が低迷しており、パート労働拡大が原因で人的資本蓄積が停滞している。大企業のTFPの伸び率は高くなっているが中小企業の伸び率停滞が日本全体の生産性停滞の要因である。大企業と中小企業の研究開発集約度や対外直接投資、アジアとの分業など海外進出の格差が95年ごろから拡大傾向にあり、これが大企業と中小企業のTFP伸び率の格差を広げたとみられる。また90年以降、製造業では「ケイレツ」に代表される密接な企業間取引関係が希薄になり大企業から中小企業への技術移転を減少させた。
このような大企業と中小企業の格差問題に対し国は中小企業対策として90年以降、一般予算に加えて補正予算で上積みし1兆円を上回ることもあった。最近では昨年3月「中小企業海外展開支援大網」を改定し、組織の壁を越えた支援、海外展開に対応できる人材育成をきめたが、進捗がはかばかしくない。いまや大企業と中小企業の格差が広がる「経済の二重構造解消」が日本経済の隠れた大きな課題である。二重構造は日本のGDP拡大や生産性向上、技術革新の阻害要因になる。中小企業再生による雇用者の賃上げや雇用創出なしには「善いインフレ」、即ちデフレ脱却が見込めない。

中小企業金融円滑化法が3月31で終了したことから金融庁は円滑化法の期限切れ後も個人事業主など小規模事業者の実態把握に力を入れ、中小企業の返済猶予の要請に柔軟に応じるよう求め、円滑化法の期限切れで倒産が急増しないよう警戒を強めている。中小企業金融円滑化法と再生支援機構を引き継いだ形になる「地域経済活性化支援機構」は中小・中堅企業向け直接支援として出融資枠を旧機構の3000億円から1兆円に拡張し再生計画策定や債権買取期限を2018年3月まで5年間延長するとした。中小企業金融円滑化法(09・12~13・3)を活用した中小企業は30~40万社のうち30万社が金融機関から返済猶予を受け、3万社は倒産する公算大といわれていた。ちなみに1980年以降の倒産件数は年平均1万5千社である。

中小企業の事業再生のための「地域経済活性化支援機構」や「中小企業再生協議会」は取引先の経営課題を把握分析して再建計画策定の支援をするという。だが中小企業は大企業に存在するポピュラーな技術でなくニッチな技術に特徴付けられている。このような特化した技術に関し専門的知識を持つ人材は世の中にきわめて少ない。中小企業の最大の課題はこのようなニッチな技術を生かす市場開拓にたけた人材が限られていることだ。また「中小企業再生協議会」は各企業の技術特性を生かした経営計画を支援企業に提示するというがその効果には限界がある。というのは経営不振の中小企業では、「働く人の結束力が弱い」「モチベーションが低い」「ビジョンや理念が浸透しない」「職場のコミュニケーション不足」「人材育成がうまくいかない」といった組織力の弱さがみられることが多い。経営者も自らの経験と勘による独自の経営感覚を固執する傾向があるから、支援機構がいくら良い経営計画を提示しても予想通りの成果が得られるか疑わしい。
「地域経済活性化支援機構」や「中小企業再生協議会」は資金的支援が必要な5~6万社の再生対象から数千社を選ぶというが選択の基準をどのように設定するのか。支援される(貸される)べき企業が支援(資金供給)されない非効率性と、支援すべきでない企業が支援される非効率を回避できるのだろうか。経営不振に陥った中小企業の多くは追いつめられて自己の殻にこもり周囲が見えなくなり日銭を稼ぐことしか頭にない、つまり「企業」ではなく「家業」になってしまっているケースが多いであろう。家業は家族に事業継承者がいなければ廃業する運命にある。現に1980年台に1500万人存在した自営業・家族従業員は近年は700万人と半減している。そのような家業の経営者は真相を隠し独自の経営理屈を語るから支援機構が真の経営実態を知るには時間がかかる。つまりこのような債務者をリストラせず追い貸し等をすることは本来市場から退出すべき「ゾンビ企業」を多く作りだしてしまうだろう。ゾンビ企業の存在は新事業への転換をもくろむ業界の体質転換を遅らせるなど成熟経済でのイノベーションに不可欠な創造的破壊機能を停止させ成長率を押し下げる原因となる。つまり、上で述べた「大企業と中小企業の格差が広がる経済の二重構造」を解消するには大企業に比べ「再編・淘汰が進んでいない中小企業の過剰状態を早急に解消」しないことには中小企業の構造改革が前に進まないことを意味する。

冒頭部分で「中小企業の伸び率停滞が日本全体の生産性停滞の核心だ」と書いたが、中小企業すべてが生産性で停滞したのではなく、若い企業や輸出・研究開発に積極的な企業はTFPの水準や上昇率では高いパフォーマンスを上げている。今や、雇用創出の原動力はサービス産業を中心とした成長産業の若い外資系企業や新規参入企業である。規制緩和などによって優良な新規参入企業が成長できる環境作りやマクロ経済政策の適切な支援があれば雇用創出と新陳代謝機能促進の可能性を秘めた若い企業も多い。その背景は大きなイノベーションと新たな産業の芽が社会や産業の複数の分野でうまれているからであり、今後の経済活性化には新しいサービスや製品で市場を作り出すベンチャー企業の果たす役割が大きい。

「地域経済活性化支援機構」は地域金融機関など民間との共同出資を通じて全国に70基金、総額2000億円規模の再生ファンドを育て、地域支援機構がファンドを通じてベンチャー企業をも支援する仕組みだ。日本経済の成熟につれ成長する産業と衰退する産業の区別が難しくなり産業単位での振興が難しくなっている。「地域経済活性化支援機構」が限られた施策や資源を効率的に活用するには中小企業の構造問題、すなわち中小企業の過剰状態を早急に解消し企業再編・集約によって低生産・低収益・小規模乱立という中小企業の構造自体を改革する必要がある。その狙いは中小企業の将来への雇用機会確保と成長の持続性を維持できる産業構造に変えることである。
経営資源が限られる中小企業が海外の成長市場にターゲットを合わせれば日本を基盤とする従来のパラダイムでは対応できない。これまでのように内需に依存してそこで培った品質やコスト競争力を生かしながら海外展開するやり方は時代遅れだ。今後は海外流失のない将来の市場成長が見込める国内需要に的を絞った内需志向型企業として企業の事業再編・企業再編・業態転換を進めるべきである。国内で市場成長が見込める分野は医療・介護・農業である。またエネルギー・環境技術も地域経済社会の再構築を含めて、中小企業が内需型産業への投資で供給体制を整備していくことができれば、大企業がグローバル化し世界に進出していくなかで中小企業が国内雇用確保のために重要な役割を果たす。例えば医療技術の進化や多様化する患者ニーズに応える製品開発は複雑な部品の加工など特技を持つ中小メーカーがその分野に業態転換すれば新たな商機につながるし、国内でモノ作りを続け地元の人々の働く場所を作ることができる。
新産業や新市場の勃興期には、大きな外部経済からの利益、即ち技術開発者以外の企業や個人が市場を通さないで利益を得ることが多々ある。その場合に研究開発投資が過小になる危険を避けるために地域経済活性化支援機構が政策的補助によって投資インセンティブを引き上げることは、経済学的に有意である。また債務超過に陥った企業が、もし債権放棄で再建可能なら民間で対応すべきだが個人保障や不動産担保偏重などの伝統的融資慣行がネックになって資金面で支障をきたしている場合は地域経済活性化支援機構が補完的役割を果たすことは極めて効果的である。

地域再生なしにデフレ脱却は難しい。地域再生には資本、高度な技術や知識を持つ労働力と事業所の集積による成長要因が必要だ。財政難の自治体は補助金の総額を絞り込み医療や新エネルギーなど成長分野に企業を誘導しようとしているようである。時限的に地域経済活性化支援機構が地域発展のエンジンとして自治体と連携して都市と周辺エリアを圏域とした経済成長を促進する発展政策を講じてはどうだろう。国家戦略の見地からこのような都市圏域の発展を統合的に支援することは資金・資源の効率化につながる。金融・産業・地域の一体化策で企業の再編促進、業種転換などきめ細かい支援で企業の事業を再編できれば新たな雇用も期待できる。
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この記事へのコメント

由美
2013年07月28日 14:47
猫さん見ました!
とっても強そうで可愛いです(^-^)

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