【安倍内閣⑧】税制改正は成長分野への資金と労働力移動に狙いを絞るべきだ

自民、公明両党は1月24日、2013年度税制改正大綱を決定した。内容や狙いは①デフレ脱却に向け民間企業の設備投資や雇用拡大の呼び水となる政策減税措置と②消費税引き上げに向けて増税の影響が大きい商品の駆け込み需要や反動減の影響を少なくする家計への配慮。
今回税制改正の特徴は早期の脱デフレを狙った短期的経済効果を主眼とする減税措置が多い。一時的に景気回復しても息切れが心配だ。経済対策に伴う減税規模は3300億円に上がるが、既存の政策減税の手直しが多く、このような小手先の税制改革で日本経済を本格的に再生できるのか疑問である。日本の現状は素材産業を中心にアジア地域の設備能力過剰のところに新興国の需要の伸びが鈍化し、日本に余った製品が流れ込んでいる。内需の鈍化と国内市場の縮小が同時に起こり、国内生産が減少する事態が鉄鋼、石油、石油化学など素材産業で顕著だ。今回の政策減税でこれ等の企業が事業環境の変化に合わせて統合や財務リストラ、事業再編など競争力強化と新成長分野の立ち上げに動こうとするとはとても思えない。海外企業呼び込みや企業の成長力を底上げする法人課税実効税率の見直しなどを含めた成長戦略の議論を国際的な水準を視野に入れて早期に始めるべきだ。

今回の民間部門活性化のための減税の目玉は研究開発や設備投資などの法人税軽減のようである。だが時限措置が多く持続的な効果が期待しにくいうえに、13年から2年間の措置である研究開発減税は製薬や機械など特定の企業や業種に減税の恩恵が限られると予想される。近年は技術的革新が雇用を生まなくなる傾向にあるのに加えて政府が無理して作った仕事は解決策にならないことが多かった。研究や設備への投資支援ならこれから成長が見込めるようなシーズやニーズに的を絞り一人ひとりが自ら仕事を生みだす分野の研究や教育を支援した方がよい。日本の成長に研究や教育の役割は大きい。世界から人を引き付けることを狙って待遇や研究施設、周辺の人材をもっと魅力的にすることを支援してもいい。例えば新興国やサイバー空間を対象としたサービステクノロジー開発など。
給与増しや雇用促進を狙った減税(雇用や従業員の給与を増やした場合そのうちの一定額を法人税額から差し引く)も前政権政策の焼き直しであり効果が疑問。雇用拡大は日本経済の潜在成長力引き上げでの経済活性化によるべき筋合いのものだ。雇用に企業経営者が慎重な姿勢を崩さないのは財政赤字に関する不確実性にある。デフレ脱却のカギは新産業を生みだす規制改革にある。首相のリーダーシップで規制改革が進められるかどうか。

日本の低成長の原因は少子高齢化などの労働人口減少もあり潜在成長率の低下にある。労働力減少が資本収益性を悪化させ、投資を抑制して潜在成長率を低下させる。これが低成長のメカニズムだ。積極財政と金融緩和による景気刺激策だけでは潜在成長率を高めることはできない。問題は景気の持続性である。積極財政の本質とは借金による将来の所得の先食い、金融緩和とは借り入れコストを下げることで将来の投資や消費を前倒しする策。需要前倒しが終われば景気は息切れする。財政悪化を理由に日銀が国債を買い入れることで金利の上昇をおさえられるとすれば経済のどこかで金融不均衡、バブルを生む。こう見てくると日本経済成長策は労働力確保とイノベーションによる生産性向上しかない。
つまり、経済活性化に寄与する税制とは短期的な効果を狙った小手先の政策ではなく、規制緩和で民の活力を引き出すことと密接に絡み合い、企業の期待成長率を高める政策と連動した税制でなければならない。今必要なのは輸出産業に代わり国内で雇用を生み出す産業作りの支援だ。それは自動車・電気頼みの産業構造から脱却し、環境・医療・介護・保育など潜在的に需要が見込める分野にシフトを促す法人減税でなければならない。

消費増税に向けての環境整備では、自動車取得税廃止や住宅ローン軽減など家計の負担を軽くする措置が多く盛り込まれた。消費増税後に住宅購入者に現金を給付する支援制度や住宅ローン減税利用者を対象に所得税と住民税の減税枠の使い残し部分を現金で支給するなど。しかしこのような消費者の負担軽減に配慮すればそれだけ税収が減り財政再建の道が遠ざかる。地方税の自動車取得税の財源の手当ての先送りや自動車重量税を特定財源に近い形に戻すのは理解に苦しむ。経済格差縮小ということで、富裕層への課税強化や消費増税の際に負担が重くなる低所得者層に現金を給付する。低所得層への配慮は医療・介護・年金など社会保障のあり方を含め所得再配分の在り方を総合的に考えたうえで総合的見地から対策を講ずるべきだ。
贈与税で教育資金として孫に贈る場合1500万円まで非課税制度は(13年4月から15年12月までの時限措置)現状でも110万円までの非課税贈与の枠はある。親の生活水準と子供の教育水準の相関が強くなっている現在教育格差を拡大する恐れはないのか。

家計に関しては富裕層の購買力は健全だが高い品質の商品を長く使おうという消費志向が強い。平均的世帯収入の中間層の消費志向が落ち込んでおり高級品を除くと価格の下押し圧力が強い。衣料品や雑貨などの需給ギャップが大きく価格が上昇に向かう昔のイメージには程遠い。小売企業は価格上昇を前提とした戦略は難しい。消費増税の影響は小売企業には軒並みマイナスとなるだろう。富裕層向け高級価格帯は変わらないとしても中間層向け商品価格はさらに下がり、節約志向はさらに強まるだろう。さらに踏み込んで税制や社会保障や教育などを改革しないと消費支出を増やすことはできない。増税する以上はこれからの賃金や物価の将来像、財政の健全化を含め政府は日本の成長路線の確かな道筋を示すべきだ。今の政府に決定的に欠如しているのはビジョン。「国が成長して国民が幸せになる」という総論としての目標と道筋がいまひとつ明確でない。戦術のまえに国家戦略が明確でなければ国民はなぜそうなのかを理解し難い。

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