【安部内閣誕生⑤】補正予算、デフレ対策は歳出削減と構造改革で対応すべし

今年度補正予算案は、来年度の予算成立が遅れることを踏まえ大規模なものになるという。景気下支えを狙い、10兆円規模の予算枠で公共事業などに財政出動し、3年ぶりに国債を追加発行するという。これは14年春の消費税引き上げに備えて増税を判断する13年夏に景気が底割れする事態を防ぐ意図は解るが、景気の落ち込みを一時的に支えるだけで持続的な成長やデフレ脱却にはつながらないだろう。GDPの2倍以上の債務残高を抱えて、これ以上の財政出動の余地は乏しく、財政出動が止まると共に元に戻り、デフレ対策の二の矢が打てないからだ。
民主党政権では財政規律維持のため毎年度の国債発行額を44兆円以下に抑えてきた。今回の政権交代後の補正予算で約5兆円国債を増発しても国際的公約である財政再建計画を遵守できるのだろうか。遵守できるというならどのような数字的裏付けがあるのか。危惧すべきは財政出動の余地が乏しいなかでデフレ脱却を金融政策に頼れば通貨の信認が低下し金利急上昇の可能性が高いということ。既に新発10年物国債利回(0.735%)が0.01%上昇、超長期債利回りは8カ月ぶりの高水準になっている。

日本のGDPは20年前とほぼ同じだが国と地方の長期債務は3倍に膨らんだ。日本の財政は消費税を10%に上げるだけでは健全化しない。日本の最重要化課題は財政再建であるはずだ。
経済成長の理論である「新古典派成長モデル」によると一人当たりGDPが増加すると経済成長率が低下する。生産設備などの資本蓄積が増えるほど追加の投資から得られる限界収益が小さくなるからで、この理論にしたがえば日本を含む先進国において今後は、大きな経済成長が期待できないということになる。だとすれば巨額の債務残高を抱える日本が基礎的財政収支を改善し2020年までに黒字化するには消費増税、経済成長による税収増しと共に社会保障費を含む歳出抑制が実行できるかどうかが極めて重要になってくる。実際、我が国は94年ごろまでの負債依存度はOECD先進国の平均レベルだったのがバブル崩壊後、税収低迷にもかかわらず過去の高度成長時代に拘泥して公共投資を継続し歳入不足分を埋めるため負債が増えた。この過ちを再び起こしてはならない。これからは身の丈に合わせた政策が必要である。増えることが当たり前だった人口や国内総生産が減るのだから需要も減少するし、人も社会もそのままでいられるわけはない。発想をかえ、仕組みを変えることがもとめられる。

かつて英国のサッチャー政権はスタグフレーションに金融引き締めと緊縮財政で挑んだ。2,3年後まではマイナス成長で財政赤字も増えたが82年以降は成長がプラスに転じ80年後半には財政黒字化した。付加価値税増税、所得税・法人減税、福祉支出抑制、国営企業民営化、規制緩和がサッチャー政権のメニューで税金を使う政府の仕事を減らし納税する民間の稼ぐ場を増やし、財政再建と成長戦略を結び付けたという事例もある。従って日本も既得権に縛られず機会の平等と競争を導入した規制緩和を軸に痛みを伴う改革にも果敢に取り組むべきだ。

今の日本は新たな需要の受け皿となるインフラ産業、医療農業などの供給サイドには高コスト体質や非効率が目立つ。この体質を温存したままで需要が膨らめば、国民の負担ばかりが増え財政規律を蝕む。例えば社会保障は教育、設備投資、技術開発と違い将来の供給力にはつながらない。保険料や税負担に依存する社会保障費を拡大しすぎれば財政規律を損ない成長にマイナスの影響を及ぼすから医療介護の構造改革に切り込むべきだ。また、自民党は「農家が農地を維持する」ためにお金を払う制度の導入を掲げる。この制度は農地を持つ既存農家の延命策でほぼすべての農家が対象になり実現には大幅な予算増額が必要になるだけでなく、栽培技術もなく、販路確保もできない人への所得保障が、外からの風で新陳代謝を加速し付加価値を高め、競争力をつけようと努力する農家の意欲や企業参入を阻害する。農業の効率化推進も急務だ。

政府はデフレ脱却には財政政策や金融政策の出動余地が乏しい現実を認識して民間需要の持続的成長に頼るしかないという旗印を鮮明に国民に示すべきだ。成長力底上げのための企業や国内立地の競争力強化には、法人減税、金融緩和と連携した民間活力、海外からの投資、特に日本企業が保有する60兆円の資金を国内投資に引き出す戦略がいる。(日本政策投資銀行の調査では製造企業が12年度自動車業界の海外設備投資は国内投資額の95%を占める。ある大手化学会社は「国内投資は補修が中心。新規投資のほとんどは海外」という)。

自民党が言うところの経済成長を目指すにあたっては、重点的な将来に向けての成長戦略を絞り込み、系統立った政策策定によって業種業態ごとのきめ細かい対応をとるべきだ。例えば、介護に関しては小企業が乱立するゆえの非効率是正。企業集約や異業種参入等で生産性を向上し、今の労働集約型産業からロボット、センサーなど既存技術を活用して知識産業化するなど。
同じく自民党の言うところの国民総所得を最大化しようとするならば、日本企業が海外で活動して利益があげられる環境作りがいる。たとえば海外進出の日本企業は対中ビジネスでは知的財産権保護、未熟な法制度と運用に問題に悩む。経済連携協定や投資協定を通じて企業の利益を保護する施策がいる。稼いだ金が日本に還流するに当たり、途上国からの送金や課税などに多くの企業が制約を感じている。きめ細かい経済外交が求められる。高い法人税や円高などビジネスの制約を減らし国内のビジネス環境を魅力的にしておかないと海外で稼いだ金は現地に再投資される(中国での日本企業がその例)。

デフレの原因として需要を喚起する適当なマクロ政策がとられなかったために、消費者が将来への生活不安から節約志向に入ったとの見方が多いが、わたしは日本経済のこの20年の低迷の原因に付加価値生産性の伸び率が韓国、台湾インドなどに後れを取ったことをあげたい。今後は生産性の低い部門から高い部門への労働力などの資源移動が進むような政策で産業構造改革を目指すべき。特に研究開発などによる生産性向上の取り組みや産業構造転換や労働市場の改革が急務である。
つまりは安部内閣が医療や保育など潜在的ニーズの多い分野で縦割り行政の壁や支持母体の反対を乗り越え規制改革ができるか。またアジアの成長取り込みには知的財産権などの質の高い貿易投資ルールをアジアに作る戦略がなければ長期的な経済成長は望めないということである。

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