【安部内閣誕生すれば④】公共事業はインフラ維持に。震災にはソフトで対応を

東日本震災をきっかけにそれ以前の公共事業費縮減の路線撤廃を求める声に続いて、与野党双方から公共事業拡大の要望が相次ぐなかで発生した「中央自動車道・笹子トンネル」の事故は道路などの老朽化したインフラをどうするのかという古くて新しい課題を改めて我々に突き付けている。

日本の高速道路の4割は開通から30年以上経過している。高速道路を利用する車は一日平均500万台、陸上貨物輸送の約半分を担う。国交省によると補修が必要な高速道路の損傷の数は直近の5年間で5倍に膨らんだという。
しかし、老朽化したインフラは高速道路だけではない。1964年の東京五輪前後の時期に公共建築物や上下水道、橋などの公共インフラが一斉に建築され、今、耐用年数50年を超え建て替えの時期にきている。こうした問題は国交省が管理する公共インフラに限った話ではない。

総務省が3月に公表した自治体が管理する公共インフラ更新費用は人口一人当たりの年平均で6万3950円。人口1億2千800万人だから全体で年平均8.2兆円、今後50年間で400兆円を超えるという。これを年当たりに均すと直近の更新費用の2.6倍になり公共建築物やインフラへの新規分を含めた現在の投資額を13%上回る。今後20~40年にかかるすべての自治体公共建築物の年更新費用は足元の公共建築費への投資的経費の2倍前後で公共建築の新設をあきらめすべての投資的経費を維持・更新に回しても財源が足りないという。自治体は隠れ借金でしのいでいるのが現状で表面化すれば自治体は不健全団体に転落する。
たとえば公立中小学校のうち、改修が必要な築後25年超えは床面積で全体の72%、うち改修済みは1割。どこの自治体も保有公共建築物の4~5割は学校が占める。道路や上下水道など公共インフラの維持更新への対応はとくに遅れ気味で、対策を講じないならば日本でもアメリカと同様に橋が落ちるリスクがある。老朽化などで通行禁止となった15m以上の橋は今年4月で08年の8割増し、通行規制されている橋も08年の7割増しという。国交省管理インフラのみならず自治体が管理する公共インフラに対する管理指針や更新計画の策定は国家の急務である。

自民党の選挙公約として「国土強靭化計画」が打ち出されている。しかし、震災に関して以前と同程度の防災対策をしても今回以上の震災が来れば防ぎようがない。巨大地震は発生すれば被害は莫大だが発生頻度は僅少だし、被害場所も限定的だ。震災などの自然災害に関しては発生した時の被害を小さくする対処療法しかなく、費用対効果の面からハードよりソフト面での対策を重視すべきである。一方、今後予想される公共インフラ事故は全国津々浦々での発生頻度が高いと予想される。インフラなどの人工物に対しては過去の統計から時事故発生の予測可能性が高いから「事故そのものを防ぐ」、あるいは「事故の程度を軽くする」対策が可能だ。
選挙公約は具体的表現に乏しいので当方の推測の域を出ないのだが、もし「国土強靭化計画」が都市と地方の格差是正のための公共事業というならば、その考えは消費地近接や供給ネットワークを重視する今の時代に土地や人件費の安さだけでは企業を誘致できない。ばらまきに終わるだけで地方の経済活性化への寄与率は低いだろう。

今回の笹子トンネル事故も損傷が軽微な段階で補修しインフラの寿命をできるだけ延ばす工夫があれば事故は防げたのではないか。今回事故を契機に道路をはじめとするインフラ整備を「造る」から「維持する」ことに方向転換すべきである。開通から何十年もたった橋やトンネルの維持や交換の費用は巨額の債務にあえぐ国家財政をさらに圧迫する。建設費の財源確保を真剣に考えるべきだ。
少子高齢化、社会保障、財政赤字という構造問題に加えてエネルギーに貿易赤字‐‐‐。これからの日本を考えるとき、「政権を取って政府がカネさえつぎ込めば何とかなる」という高度成長期の夢を追うかのよう政策ではなく、まずは「低成長経済」を前提に、持続可能な社会を構築する「成長シナリオ」を創発する地道な努力から始めてほしい

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック