【もし安部内閣誕生すれば①】短絡的な金融緩和政策は国民生活を破綻に招く

 安部氏が自民党総裁に選ばれた。衆院選挙の結果次第では次の首相に就く可能性がある。それゆえ、ケチをつけるようだが、選挙が終わった今、総裁選での安部発言に疑義を質したい。

 安部氏は、まさか累積財政赤字を物価上昇(インフレ)で棒引きしようと短絡的に考えていないと思うが「デフレ脱却の手段として日銀に量的緩和を含め一層の金融緩和を求める」姿勢を明らかにしていた。金融緩和で景気が浮揚し財政赤字も克服できるというのだろうか?デフレ克服は日銀にとっては最優先の課題だが日本経済にとっては最優先とは言えない。1990年代に始まった日本のデフレは物価下落率が概ね1%未満でこのようなマイルドなデフレは弊害が小さい。2003年から2005年の5年間、日本経済は毎年2%成長を遂げている。持続的成長を実現する適切な政策があればデフレは早晩解消するはずだ。考えるべきことは欧米の例を見れば、低金利時の金融緩和は経済成長に対して思ったような効果をあげていないという現実の姿だ。

 日本デフレの一番の原因は世界の経済環境激変に日本の経済構造がついていけなくて潜在成長率が下がっていることである。
 失われた20年、我が国の労働生産性の伸びは主要国の中では最低水準である。特にTFPの伸び率は韓国や台湾、インドの3分の1程度である。理由は近年の我が国のイノベーションの方向が市場につながらないにもかかわらず技術的に高度な製品開発に目が向き、地道な研究の成果であるシーズを製品・サービスに落とし込んで国内外の需要を掘り起こせなかったことにある。
 このように技術革新の遅れが原因となり製品価格が時間の経過による生産性向上を反映して切り下がっているにすぎず厳密な意味でスパイラルに陥ったデフレというよりも、単に需給要因、需要の弱さに起因する物価低下圧力が顕在化した現象である。従って金融政策に頼ってもデフレは脱却できない。処方箋が違うのである。むしろ金融緩和に依存して財政規律が緩むと国債が売られ長期金利が上昇することによる弊害が問題だ。産業の空洞化の中での金融緩和は円安を招くが産業空洞化が進めば輸出で稼ぐことができない。資源に乏しい我が国は輸出での利益を国内投資して国民生活を豊かにするしか生きる道はない。人口の4分の1を占める高齢者が消費に占める位置付けも無視できない、インフレほど恐ろしいものはない。観光資源しか持たないギリシャの惨状は日本にとって他山の石ではない。

 安部氏はまた、「国が医療や科学技術なその成長分野に資金を投じ税収を増やすべき」と主張するが具体的にはどうするのだろうか。日本産業の低迷はグローバル化の影響で技術中心の時代が過ぎ、何をどう作って売るかという事業モデルの改革が必要な時代になったのに賞味期限が過ぎた製品機能や生産コスト改善で対応しようとしたことにある。
 安部氏が資金を投入すると言うところの成長分野、即ち、インフラ産業、医療、農業などの供給サイドには高コスト体質や非効率が目立つ。この体質を温存したままで需要が膨らめば、国民の負担ばかりが増える。これが対策を立てても一向に減らない医療費など社会保障費の現状が如実にあらわしている。既得権を打破し競争を活発化する規制緩和、政府支出を削減し法人税引き下げなど産業空洞化を防ぐ政策が必要だ。政府支出膨張を賄うための重い税負担・保険料負担が労働意欲をそいで生産活動を停滞させ人材や企業の海外流失を招き成長を低下させている。資源に乏しい日本の成長には外需の力が欠かせない。にもかかわらず日本の輸出依存度は独仏より低く、中国、韓国にも大きく水をあけられている。
 アジア各国は外資に頼り輸出を伸ばし、輸出の伸びが雇用や設備投資を通じて消費を拡大する構造であるから、欧米の経済低迷が継続すればアジアの経済成長は鈍化する。そうしたなかで日本が輸出を伸ばすには世界の環境や日本の強み弱みをきちんと分析し嘗ての韓国、台湾、インドが行ったように的を絞った成長戦略策定と構造改革がなければ国がいくら資金を投入してもザルで水をすくうようなものだ。

 結論を言えばデフレ現象が起きている状況での金融政策が金融緩和で物価安定という基本目標から離れ、それが長期にわたれば「金利機能が働かない金融政策」が継続し金利メカニズムを長期にわたって犠牲にする。その結果、かえって日本経済の構造改革を遅らせ、日本経済を不健全にする。確かに成長戦略と財政健全化は連動する。しかし、成長戦略は阿部発言のように、やみくもに国が資金を投入するのでなく、日本が強い分野の規制改革に取り組むことから手をつけるべきだ。それによって、民間企業の創意工夫で生産性向上や資本設備への投資を活発化させて長期的成長を促進することができるはずだ。もう一つは政策経費削減。これまで景気対策として政府の支出拡大策がとられてきたが、十分な効果を発揮せず、政府支出が高止まりしたままだ。

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