『検証東電テレビ会議・炉心溶融をくいとめられた可能性がある(朝日新聞)』

私は8月24日のブログ「福島原発事故調査継続・事故現場検証で原因の解明と責任の究明を」で「水素爆発は強力なリーダーシップがあれば防げたかもしれない」と書いたが、今回の朝日新聞記事も同様の見解である。
9月5日朝日新聞記事「東電テレビ会議検証」によれば「東電は強力な消防車とその運転・操作のできる人、バッテリーや燃料などの物資を玄倍に集めるのが後手に回り、事態を悪化させていた。物資購入の現金も一時は足りなかった。機材や人の工面ができていれば2号機と3号機の炉心溶融をくいとめられた可能性がある。朝日新聞が東電のテレビ会議の映像を検証した結果わかった(以下省略)」。記事には生々しい現場の混乱状況を「ポンプ車、請負頼みで送れ」、「物資滞留、ガソリン届かず」、「自衛隊が水運搬」、「海水の吸い上げ備えなし」という見出しで伝えている。
ここには、適切なリーダーシップを発揮しない組織のトップ、事故対策として何を優先的に対応すべきかの判断が全くできない幹部の姿、事故収拾を東電だけで自己完結しようとする無謀な試み、3K(汚い、きつい、危険)仕事は外注に丸投げ体質や情報軽視の姿勢が赤裸々描かれている。これらは、日頃の業務遂行が一定の組織構造による運用やシステム的運用でなく、恣意性の高い個人依存型になっていたツケが「機能しない指揮系統」として顕在化した姿だ。

事故対応での迅速な業務遂行は目的の単一化とそれに対する現場力の集中が要諦であるにもかかわらず、指揮命令系統が機能しなくなったということが福島第一原発の未曽有の大惨事となった主な原因だ。その裏には「東電の日常の経営・管理体制が全く杜撰」という姿が透けて見える。経営とは常に変化変動するものでありその変化対応こそが経営・管理なのだ。東電が常日頃から変化に対応する体質と体力を実践の中に作り変動の中に何が必要で何が重点なのかをつかみそれを目に見える管理体制にしておけばこのような無統制・無意味な混乱はなかったはずだ。(詳細は私のブログの8月24日付「福島原発事故調査継続・事故現場検証で原因の解明と責任の究明を」を参照してください)
現に東北電力女川発電所は福島第一原発と同系の沸騰水型軽水炉が3つあるが原子炉自動停止後、10時間で3つとも冷温停止させた。この大惨事は東電という前近代的管理体制の会社だから起こったと言えないこともない。だから、事故再発防止には原子力発電装置の安全性を問題にするより東電の人為的ミスの原因追及が重要なのである。人為的ミスは備えさえあればいくらでも回避できる。
例えばIAEAなどの安全基準に準拠した福島原発事故発生現場(原子炉建屋内)での詳細な現場検証と責任の所在や、東電と他社原発の日ごろの安全基準順守度の差異をあきらかにすれば個々の原発の安全度合い、即ち「準備を怠らなければ大惨事を避けられる事故」と「不可避な事故」が解るはずだ。基本的にIAEA深層防護の考え方の1~3層(炉心溶融を避ける多重の安全装置)は国内原発で考慮されているはずなのだ。事故発生後に放射能の放出を抑える対策や放射能の影響を最小限にとどめる避難などの対策の対策は電力会社の任意に任されていたが‐‐。

野田政権は2030年の電力に占める原発の割合について「0%」「15%」「20~25%」とする選択肢を示しパブコメや意見聴取会、討論型世論調査で国民的議論を進めてきた。30年時点の「原発0%」の支持率はそれぞれ87,68,46.7%という。(政府はエネルギー政策の国民的議論について「多くの国民が原発のない社会を望んでいる」とみている。其の判断は正しいのだろうか。

多くの合理的国民は「原発の安全性」と「生活の豊かさへの影響プラス社会への影響」のバランスの上で電力に占める原発の割合を考える。しかし、原発0%なら家庭の電気料金が2倍になるとか燃料調達費の増加や電力不足など「生活や社会への影響」の情報は与えられても、「原発の安全性」に関する情報はほとんど与えられない。これでは国民は判断のしようがない。つまるところ安全性に関して政府から情報を与えられていない一般的国民は、「0%」「15%」「20~25%」とする選択肢から一つを選べと言われれば、横道衆院議長のように「事故が起きた時の被害の重大さ」を理由に、あるいは阿久津善内閣府政務官のように「事故のリスクは安全性をどれだけ高めてもゼロにはできない」という単細胞的思考から「原発0%」とするしかないのが本音だろう。よくわからないから「0%」なのである。「安全」に関する科学的・論理的情報が与えられれば、国民の判断は変わる可能性がある。

蛇足になるが国家の将来をきめる電気エネルギー問題を政府が素人の国民に丸投げしようとする理由は、手厳しいようだが、政府の要人たちが勉強不足のため原発の知識に乏しく、したがって自ら決断する自信がないからではないのかと疑いたくなる。

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この記事へのコメント

2012年09月09日 23:47
今の庶民は、「原発の安全性?言わないでもわかる。危険きわまりないものだ。」そういうところで思考停止しているのが現状ですね。
どんな発電方法にも、メリットとリスクがあるわけですから、それをわかりやすく説明し、どうすべきかを示すのが政治家の仕事ですよね。
ところが、それをやると人気がなくなると言って何もしないのが今の政治家。それどころか、今の雰囲気に流されて思慮もなく「原発0」ありきに流される始末。これではどうにもなりませんよね。

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